バンタム級、鳴動。 豪華なカードが用意された本興行でも、とりわけファンの食指を動かす原動力となったのが、この土屋ジョーVSラビット関の一戦であろう。 土屋ジョー選手の相手を破壊せんばかりの攻撃的なファイトは、90年代中盤に全日本キックのバンタム級の黄金時代を支え、昨年は、K−1にも参戦して福富栄一選手(真樹道場/現在引退)を葬り去り、バンタム級最強の座に一番近い選手と目されてきた。 しかし、今年に入り、外国人選手との対戦が続いたが、その対戦相手の力不足もあって土屋選手本来の凄みを見せることなく勝ち星を重ねる結果となった。アントニー・エルカイム戦では、念願の世界タイトルも手に入れたが、不完全燃焼の感は否めなかった。 そんな折り、新たにバンタム戦線を駆け上がってきたのが、ラビット関選手であった。昨年10月にMA日本王者のタイトルを奪取して以来、無類のテクニシャンぶり発揮、強者・曲者揃いのMAバンタム級で、完成度の高い闘いを見せつけてきた。遠間では前蹴り、左ミドルの切れ味も鋭く、相手の飛び込み際に放たれるテンカオも一級品。全ての距離を制する関選手の闘いぶりは、バンタム級トップクラスにあることをファンは確信しただろう。 そんな、二人が闘ったら・・・、そんなファンの思いが実現する。 はたして、溜飲を下げるのはどちらのファンか。おそらくは、全てのファンが満足できる闘いを見せてくれるだろう。
パンチで攻め込む土屋
関、反撃の飛び膝
土屋選手の破壊本能爆発。 久しぶりに、「怖い」土屋選手を見た気がした。関選手を叩き殺さんばかりにストレートを打ち抜くその姿に、ファンは震えた。そして、その土屋選手の本能を十二分に引き出し、激しく応戦した関選手の姿に、会場全体が共鳴した。 試合前は、ショートレンジでは土屋選手が優位に立つだろうが、関選手の懐に入れるかどうかが鍵になるだろうと思っていた。しかし、殺気漂わせる土屋選手のパンチやキックは、距離を選ばず関選手を襲い、懐に入れば渾身の力を込めて拳を振り抜いた。 しかしながら、関選手も決して受けに回らず、初回から土屋選手の気迫に呼応して積極的に攻め続けた。初回、いつもに比べて気負っているようにも思われたが、逆にそれが試合のボルテージを上げることになった。途中3度もダウンを奪われながら、そのペースを落とさず最終回まで攻め立てるスタミナは見事としか言いようがない。 技術的には、関選手の動きを研究していたのか、土屋選手のワンツーからショートのアッパーへと続くコンビネーションが関選手の動きをしばしば止めていた。関選手のオールラウンダーぶりは相変わらずの素晴らしさだった。が、土屋選手の、気迫のみならず「殺気」が破壊力となりパンチに込められ3度のダウンというアドバンテージを取り、かつ、終盤のローのダメージも耐えきった。 この試合、勝った土屋選手はあらためてその「凄み」と「強さ」を誇示したが、負けた関選手も土屋選手に肉薄するだけの力のあることを証明して見せ、決して輝きを失ったわけではない。むしろ、「バンタムにラビット関あり」を印象づけたのではないだろうか。 観客も、最終回までどちらが倒れるのか分からない激しい打ち合いに、興奮の頂点に達したようだ。知らず知らずに声を出し、選手の攻撃に「オッーイ!オッーイ!」と掛け声を合わせ、両選手を後押ししていた。選手の気持ちと観客の気持ちが一体になったような、まさにキックの醍醐味を感じさせてくれる好試合だった。 文 片岡
観客も、最終回までどちらが倒れるのか分からない激しい打ち合いに、興奮の頂点に達したようだ。知らず知らずに声を出し、選手の攻撃に「オッーイ!オッーイ!」と掛け声を合わせ、両選手を後押ししていた。選手の気持ちと観客の気持ちが一体になったような、まさにキックの醍醐味を感じさせてくれる好試合だった。 文 片岡