DAGEKIトップへ 試合結果一覧へ


 [第11試合 MA・全日本対抗戦 54kg契約5回戦]
土屋ジョー vs ラビット関
 バンタム級、鳴動。
 豪華なカードが用意された本興行でも、とりわけファンの食指を動かす原動力となったのが、この土屋ジョーVSラビット関の一戦であろう。
 土屋ジョー選手の相手を破壊せんばかりの攻撃的なファイトは、90年代中盤に全日本キックのバンタム級の黄金時代を支え、昨年は、K−1にも参戦して福富栄一選手(真樹道場/現在引退)を葬り去り、バンタム級最強の座に一番近い選手と目されてきた。
 しかし、今年に入り、外国人選手との対戦が続いたが、その対戦相手の力不足もあって土屋選手本来の凄みを見せることなく勝ち星を重ねる結果となった。アントニー・エルカイム戦では、念願の世界タイトルも手に入れたが、不完全燃焼の感は否めなかった。
 そんな折り、新たにバンタム戦線を駆け上がってきたのが、ラビット関選手であった。昨年10月にMA日本王者のタイトルを奪取して以来、無類のテクニシャンぶり発揮、強者・曲者揃いのMAバンタム級で、完成度の高い闘いを見せつけてきた。遠間では前蹴り、左ミドルの切れ味も鋭く、相手の飛び込み際に放たれるテンカオも一級品。全ての距離を制する関選手の闘いぶりは、バンタム級トップクラスにあることをファンは確信しただろう。
 そんな、二人が闘ったら・・・、そんなファンの思いが実現する。
 はたして、溜飲を下げるのはどちらのファンか。おそらくは、全てのファンが満足できる闘いを見せてくれるだろう。



ラウンド1 始前、リング中央で激しくガンを飛ばす両者。上背のある関選手が見下ろすように睨み付ければ、下から射抜くような視線を叩き付ける土屋選手。会場は、早くもヒートアップ。
 開始直後、グローブを合わせる刹那にいきなり飛び込んでワンツーを叩き込む土屋選手。関選手も、右ローを返し、土屋選手はさらにワンツーを続け、早くも熱い打ち合いに。関選手が左ミドル、ローを放てば、土屋選手は、ガードにもかまわずワンツーからの右アッパで関選手の顔を突き上げる。関選手は、土屋選手の距離を嫌って前蹴りで突き放し、ロー、左ミドルを続ける。距離が空くと土屋選手がロングフックで飛び込み、両者ローを交換。関選手は隙を見て右ハイキックを狙うがこれは不発。土屋選手はワンツー、アッパーのコンビネーションを重ね、関選手はパンチに合わせてローやテンカオを繰り出す。そして終盤、土屋選手のワンツーがきれいに入って関選手が最初のダウン。

パンチで攻め込む土屋

ラウンド2 はり開始早々に右ヒジを叩き込んで先手を取る。両者ローを打ち合い、関選手が右ハイを空振り。その後土屋選手がショートパンチを重ねて、一方の関選手は、土屋選手の出入りに合わせてローを放つ。関選手は前蹴りを出すが、土屋選手は、すぐに前に出て頭を付けた状態から右アッパーを鋭く突き上げる。関選手も左ミドル、ワンツー、ローのコンビネーションを出すが、土屋選手がカウンターでストレートを打ち抜き、関選手が一瞬ふらつく。しかし、持ち直してミドル、ロー、前蹴りと積極的に繰り出し、土屋選手の追い込みを凌ぐ。土屋選手は、ローからアッパー、さらに手四つの状態から右アッパー。関選手はローで応戦するも、それに合わせて土屋選手がストレートを叩き込む。

ラウンド3 屋選手のワンツーとアッパー。アッパーは、近間のものと遠間のストレートアッパー。土屋の右ローに、関選手の右ロー〜左ミドル。両者ミドルレンジでの退かない打ち合いの中、土屋選手が再び右アッパーで関選手をぐらつかせると、ショートパンチのラッシュをかけ、関選手の体が折れたところでスタンディングダウンを奪う。しかし、以後の土屋選手の動きはやや鈍くなる。手数が減り、関選手の動きに合わせてワンツー、組み際にアッパーを入れる。終盤には、足の止まってきた土屋選手に対し、関選手が左ミドルを連蹴り。


関スタンディングダウン


関、反撃の飛び膝

ラウンド4 ングと同時に、激しくワンツーを放つ土屋選手だが、既に関選手のローで両足にあざが出来ている。序盤に、ショートレンジで関選手のテンプルに右ストレートがヒット。そのまま関選手がフラフラと下がると、土屋選手が一気に前に出てパンチのラッシュを掛け、ダウンを奪う。カウント8で立ち上がった関選手は右ローと前蹴りで土屋選手の足を狙う。そして、両者ともに飛びヒザを繰り出し、意地を剥き出しにする。土屋選手は、なおもワンツーとアッパーを効果的に突き上げるが、終盤は関選手が、左ミドルから、ロー、飛びヒザからロー、テンカオからローと、攻撃を休めず。土屋選手も時折ワンツーを叩き込むがやや手打ちの状態に。


土屋のパンチにのけぞる関(上)
関2回目のダウン(下)

ラウンド5 屋選手のワンツーを皮切りに、関選手が前蹴りとローを放ち、土屋選手が接近することころをテンカオでストップ。不意に右ハイを織り交ぜるが、これは土屋選手もガードし、足の運びは悪いが、パンチで応じる。関選手は、そのパンチの引き際に左ミドルを連打。土屋選手はローを単発で返すも、再び関選手がミドルを連打。ショートレンジでもみ合う中、土屋選手が髪の生え際をカットされていてドクターチェック。再開されるが、関選手が畳み込むように、首相撲に入りヒザやヒジを打ち込み、離れると左ミドル。土屋選手もヒジで応じ、関選手はテンカオ、左ミドル、右ハイにヒジやストレートを散らして攻め立てる。土屋選手もショートパンチの連打を繰り出すが、やや押し込まれ気味。そして、ゴング。


関、膝とミドル、ローで最後の反撃


土屋選手の破壊本能爆発。
 久しぶりに、「怖い」土屋選手を見た気がした。関選手を叩き殺さんばかりにストレートを打ち抜くその姿に、ファンは震えた。そして、その土屋選手の本能を十二分に引き出し、激しく応戦した関選手の姿に、会場全体が共鳴した。
 試合前は、ショートレンジでは土屋選手が優位に立つだろうが、関選手の懐に入れるかどうかが鍵になるだろうと思っていた。しかし、殺気漂わせる土屋選手のパンチやキックは、距離を選ばず関選手を襲い、懐に入れば渾身の力を込めて拳を振り抜いた。
 しかしながら、関選手も決して受けに回らず、初回から土屋選手の気迫に呼応して積極的に攻め続けた。初回、いつもに比べて気負っているようにも思われたが、逆にそれが試合のボルテージを上げることになった。途中3度もダウンを奪われながら、そのペースを落とさず最終回まで攻め立てるスタミナは見事としか言いようがない。
 技術的には、関選手の動きを研究していたのか、土屋選手のワンツーからショートのアッパーへと続くコンビネーションが関選手の動きをしばしば止めていた。関選手のオールラウンダーぶりは相変わらずの素晴らしさだった。が、土屋選手の、気迫のみならず「殺気」が破壊力となりパンチに込められ3度のダウンというアドバンテージを取り、かつ、終盤のローのダメージも耐えきった。
 この試合、勝った土屋選手はあらためてその「凄み」と「強さ」を誇示したが、負けた関選手も土屋選手に肉薄するだけの力のあることを証明して見せ、決して輝きを失ったわけではない。むしろ、「バンタムにラビット関あり」を印象づけたのではないだろうか。

 観客も、最終回までどちらが倒れるのか分からない激しい打ち合いに、興奮の頂点に達したようだ。知らず知らずに声を出し、選手の攻撃に「オッーイ!オッーイ!」と掛け声を合わせ、両選手を後押ししていた。選手の気持ちと観客の気持ちが一体になったような、まさにキックの醍醐味を感じさせてくれる好試合だった。

文 片岡


DAGEKIトップへ