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 [第9試合 日・タイ国際戦フェザー級5回戦」
小野寺力 vs アピワット・ポー・バルムガン
再加速する才能。
  その天賦の才を誰しも認め、間違いなくフェザー級のトップとしての地位を認められた小野寺選手。流麗なコンビネーションで勝ち星を重ね、勢いに乗ってきたところに対ムエタイ2連敗。そして出場停止処分と、思わぬ失速を余儀なくされた。ようやくリングに復活してからも、フェザー級ではNJKFの鈴木秀明選手が一気に台頭、現役ランカーをTKOで破り、ルンピニーでも堂々のKO勝利を上げた。フェザー級の話題が小野寺選手から鈴木選手にシフトしていったことは否めない。
 しかし、小野寺選手も前試合ではアタル選手を、スピードあるパンチで見事なKO葬。再び以前の勢いを取り戻しつつある。
 そして、今日、現役ランカーのアピワット選手を迎える。ラジャダムナンフェザー級8位の肩書は、再加速するための踏み台としては十分以上。この試合に勝って、鈴木選手に奪われていたフェザー級のイメージリーダーとしての地位も取り戻したいところ。

 果たして、スピード豊かなコンビネーションは、現役ランカーをとらえられるだろうか。



ラウンド1 ジャブ、右ストレートを単発で打つ小野寺選手。アピワット選手が左ミドル、ハイキックを続けると、それに右ストレート、右ローを合わせる小野寺選手。小野寺選手は細かいフェイントからローを出すと、アピワット選手は一気に間を詰めてヒジを振る。そして、再び距離をとって前蹴り。ミドル、左ジャブと先手をとるアピワット選手に、小野寺選手もロー、ミドルを出し、残り十数秒のところでショートパンチのコンビネーションが初めて出る。


肩口を狙った蹴りが小野寺を襲う

ラウンド2 野寺選手が、ロー、ローと続け、左ロングフックからローへとつなぐ攻撃も見せるが、全体的に距離が遠く、畳み込む攻撃には繋がらない。アピワット選手も、その攻撃にヒザやミドルを合わせ、左ミドル、左ハイ、左ミドルと、ロングレンジから蹴り込み、パンチの距離に入らない。小野寺選手もローを返すが、その後が繋がらない。ここも、終盤になり、フックとアッパーのコンビネーションが出るが、とらえきれずにゴング。


小野寺の肘をガッチリガード

ラウンド3 ングレンジから、小野寺選手のロー、アピワット選手の左ミドルが交わされる。アピワット選手の圧力に負け、やや後手に回る小野寺選手。アピワット選手が左ハイ、左ハイ、左ミドルと重ねると、小野寺選手も右ローを返す。そして、左右のフックからローへと繋ぎ、ワンツーとフックを集めるが、アピワット選手もガード。逆にパンチで前に出て、小野寺選手を退かせる。淡々と左ミドルを蹴り続け、小野寺選手を封じ込める。小野寺選手もパンチで返そうとするが、キックを腕で受けているので、返しが遅れてしまう。


アピワットのハイ対小野寺のロー

ラウンド4 ピワット選手のミドルにローを返し、ショートパンチを狙う小野寺選手。しかし、アピワット選手の左ミドルに回転を断ち切られる。小野寺選手も、距離を詰めてパンチを狙おうと細かくフェイントを出しているが、パンチを打ち切れない。逆にアピワット選手の左ミドルで先手をとられてしまう。そして、アピワット選手は、左のミドル、前蹴りで小野寺選手の前進を阻みつつ、ヒジ、ハイキックと攻撃を散らし、ペースを握る。小野寺選手もボディからワンツー、フックで入ってワンツーと、タイミングを掴みかけるが、ミドルを受け、ガードしただけで終わる場面が多い。バックブローまで繰り出すがかわされ、前蹴りで突き放される。



ラウンド5 イントをリードしていると読んだか、アピワット選手は下がってミドルを放つ。小野寺選手は、体を小さく振りながら前に出てパンチを狙うが、アピワット選手がフラフラと下がって前蹴りやサイドキックで、距離をとる。やや見合うとアピワット選手が左ミドル2発。小野寺選手はボディを狙うが、そこにアピワット選手が回転ヒジ。小野寺選手もフックからストレートを返して、さらにバックスピンキックも繰り出す。これに、アピワット選手もバックスピンキックや左ハイで応じる。左ミドル、前蹴りでただ距離をとるアピワット選手。終盤、小野寺選手もワンツー、フック、ヒジとショートレンジでコンビネーションを出すが、これもアピワット選手はきっちりガード。結局、小野寺選手は追いきれずにゴング。


小野寺のパンチ、しかしコンビネー
ションを断ち切られ連打が出ない 


アピワットの回転バック肘。タイ
人がこの手の技を使う時は相手を
舐めている時だそうだが    


そして又ミドル、小野寺完封負


消されてしまった輝き。
 やはり、現役ランカーの壁は厚かったのか。左ミドルを中心に、距離をとっての闘いを狙ったアピワット選手の術中に、小野寺選手は見事にはまってしまった感がある。
 もちろん、小野寺選手としては、パンチの距離に入ってショートの連打とローのコンビネーションを狙いたかったことだろう。だが、試合では常に後手に回ってしまった小野寺選手。ミドルを腕で受けてから返しの攻撃を出そうとしたが、このタイミングでは、アピワット選手の方は、ほぼ十分な体制が整ってしまっていた。
 二人のスピードを比べれば、小野寺選手の方が速いと思うのだが、そのスピードがあってもスタートが切れないから、十分に活かしきれない。距離をとってロングレンジで勝負しようとする相手に対しては、いささか出入りが正直すぎたのかもしれない。
 どうも、この一年、小野寺選手の真の輝きが見られなかったような気がする。この試合で、一気に輝きを取り戻したかったところだが、逆に光を消されてしまった。ムエタイへのリベンジは、先送りとなったが、気落ちしていられない。次は、前回引き分けたマサル選手とのタイトルマッチだ。ここで下手な試合をしてしまえば、小野寺選手の前途はますます厳しくなるだろう。願わくば、次こそは、再加速を期待したい。

文 片岡

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