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 [第11試合 日・豪国際戦ライト級5回戦」
新妻聡 vs ベン・バートン
妻選手が、豪華なカードが組まれた本興行のラストを飾る。

 昨年の同時季にサーイマイ選手に敗れた際に靱帯を痛め、その後10ヶ月にわたる休養を余儀なくされた。そして8月末に大分で行われた復帰戦もチュンチャイ・ゲォサムリット選手を相手に判定で落としてしまった。自ら「復活度10%」と言うその出来は、休養開けの動きとしては十分評価できるものではあったものの、やはり休養前の動きを完全に体現するものではなかった。
 このところ、自ら望んで強敵とばかり闘ってきた新妻選手だけに、蓄積されたダメージも相当なものだっただろう。靱帯損傷は、選手にとっては非常に深刻な怪我ではあるが、結果的にこの休養が新妻選手にとって良いリフレッシュになっていれば、今後の新妻選手の活躍に大いに期待できるといえる。

 対するベン・バートン選手については多くを知り得ないが、今日の試合で、新妻選手の復調ぶりをうかがうことは出来るだろうか。「倒そうとする意思」に、新妻選手の体がどこまで応じることが出来るかを見届けたいと思う。



ラウンド1 ートン選手の軽い右ミドルから始まり、左ローを蹴ると、新妻選手も左ジャブ。バートン選手が右ハイを放つとそれに右ストレートを会わせる新妻選手。さらに、バートン選手は左ハイ。新妻選手が、左ジャブから右ロー。さらに体ごと前に出るようにしてパンチを狙うが、ここはバートン選手が組みつく。互いにローを返し、終盤新妻選手が前傾してワンツーを撃ちながら前に出るが、ここは掴まえきれなかった。

ラウンド2 を振って前に出る新妻選手。バートン選手は右ロー、左ミドルと続けると、新妻選手も右ローを返す。頭を下げて、前に出ていく新妻選手は体を沈めて右ロー。バートン選手は、距離を嫌がって組みつく。新妻選手のワンツー、ローから、ジャブでロープに追い詰め、右ストレートを狙うが、ここはバートン選手が体を沈めて体を入れ替えると、パンチの打ち合いになる。そこから、バートン選手は右ミドル、高い前蹴り、右ミドルとよく手を出す。新妻選手も、ワンツーからアッパーでバートン選手をぐらつかせ、一気に前に出るが、バートン選手が必死に組みつく。

ラウンド3 ャブで牽制しながら距離を詰めていく新妻選手。バートン選手は左ミドルで距離をとりに。新妻選手は、間合いを詰めて右ボディストレート。そして、バートン選手はミドルを返す。ロープ際、バートン選手の右ストレートをヒットさせて前に詰めるが、逆に新妻選手がパンチを集める。中盤は、バートン選手がパンチにテンカオを合わせ、小さな前蹴りで出足を止め、ワンツー、フックとパンチを繰り出し、首相撲でもヒザを回す。終盤に、新妻選手も右ロー、ボディストレート、パンチのフェイントから右ローとプレッシャーをかける。しかし、バートン選手もテンカオ、ワンツー、アッパーと連打を阻止。

 
ラウンド4 ートン選手が右ロー、左ミドル、ワンツーと積極的に前に出る。新妻選手も右ロー、ワンツーヲ返し、前に出ると組みつくが首を押さえられて攻めきれない。飛び込むように右ストレート、左フックで距離を詰めるが、これもバートン選手が巧くすかしてコンビネーションに続かない。バートン選手もジャブからローとシンプルなコンビネーションは放つが、そこまで。牽制が続いて、新妻選手が再び跳ね上がるようにして体ごとワンツーを放つが、バートン選手が体を巧く入れ替えてかわす。執拗に前に出る新妻選手だが、首相撲になると力で押さえ込まれ、巧くポジションをとれない。ヒザをもらい、ミドル、フック、ミドルと攻撃を許してしまう。

 
ラウンド5 妻選手が前に出ると、その分バートン選手が下がる。バートン選手は、下がりながらも左のロングフック、新妻選手も遠い間合いからボディブローを狙う。バートン選手は、ショートレンジでは、パンチを避けて組みついて転かす。再開すると真っ直ぐ進む新妻選手だが、バートン選手の右ミドルでパンチの出鼻を挫かれる。体ごと突き進むが、やはりガチャガチャとパンチとヒザで暴れるバートン選手をとらえきれず、組み合うと、逆にヒザをもらう。飛び込んでもバックステップでかわされ、やや新妻選手は手詰まり状態。逆にバートン選手はワンツーからミドルの連打、首相撲に持ち込んでヒザを回す。終盤、新妻選手もヒザやヒジを出してバートン選手を追いかけるが、なかなか捕らえきれず、決定的な場面を作れずにゴング。

 

果は新妻選手判定勝利。されど、内容はドローに近く、まだまだ新妻選手には完全復活への余白が残されているような気がした。
 とはいえ、体より先に魂が進んで行くかのような、前へ前へという姿勢は、やはり「新妻選手らしい」試合を印象づけていたし、悲観するような試合ではなかったと思う。
 バートン選手がムエタイスタイルで組み立ててきたので、パンチの打ち合いを避け、新妻選手が飛び込もうとしてもヒザを出されたりして、思いの外やりにくい点もあったと思う。しかし、正直なところ、パンチに秀でるわけでもなく、かといって現役ムエタイランカーほどのヒザやヒジの切れがあるわけでもない選手を相手に、間合いを詰めたあとに攻めきれなかった点は、まだ新妻選手に調整の余地あり、という感想を抱いた。が、逆に欠けているのはそれくらいで、新妻選手の「在り方」のようなものは、すでに戻っているとも思う。
 おそらくは、今後も強敵とだけ対戦を望むであろう新妻選手には、今日のような試合で足踏みすることなく、完全復活、さらには、休養前以上の力強さで、荒ぶる魂に引っ張られるようなファイトを期待したいと思う。そして、多分それは、近い将来に見られるのではないか。

文 片岡

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