加速する頂点。 王者新田選手は、王座獲得当初、なかなか安定した力が出せず、危うい試合を続けていた。しばしば新田選手の試合について回った「逆転劇」という表現は、必ずしも王者の試合に対する誉め言葉とはいえないだろう。 しかし、近時の新田選手の試合は、立ち上がりの不安定さこそ払拭できていないが、中盤以降は攻守のバランスもよくなり、力強い闘いを見せている。 その、王者の力強さを支えるもの、王者の矜持こそ、ローキック。 昨年末には、J−NETWORKの小比類巻選手をローでKO。タイへの遠征においても、タイ人をローキックであと一歩まで追い詰めたという。対抗戦、積極的な武者修行を通じて、あらためて自らの武器を再確認したことだろう。 今日の試合でも、もちろん、新田選手の勝利の鍵となるのはローキックだろう。タイトルマッチを、得意な武器で勝利すれば、また王者の自信は深まるに違いない。 対する藤原選手は、前回の試合では、古豪船木実選手を判定で撃破。さすがに、ベテランらしい試合運びの巧さを見せた船木選手に対し、パンチを積み重ね、時に爆発的に畳み込んだ藤原選手の完勝だった。 しかし、やや大きなスイングのパンチは、船木選手に見切られてカウンターをもらう場面も少なくなかった。いささか「穴」が明確な感じもする。 今回、新田選手は「待ち」の選手ではないので、試合は噛み合うことだろう。ポイントとなるのは、その手持ちの武器、ということになるだろうか。
ローを返す新田
王者の矜恃。 試合を決めたのは、ローキックだった。 初回、やはり受けに回ってしまい、ほとんど手のでなかった新田選手。ガードを固めるシーンが目立ち、藤原選手のパンチに押されてしまった。これは、技術的なものと言うより、メンタルな部分の課題なのだろう。 2Rの中盤以降になって、ようやく本来の動きを取り戻し、すなわちローキックで試合の主導権を握り始めた。このローキックが、実に効果的だった。3Rには、目に見えて藤原選手の動きが落ちていた。 最近、新田選手は、積極的にオランダ、タイへと渡って武者修行を重ねている。そこでは、決してオランダ・スタイル、タイ・スタイルを模倣するのではなく、自分自身のスタイル、いわば、新田スタイルというべきものを模索しているようだ。 そして、それは少しずつ形をなしているのではないだろうか。「ローキックしかない」ではなく、「ローキックがある」ということ。 一つ大きな武器がある選手は、相手のバランスの良さを突き崩すことができる。そして、大きな武器があるからこそ、余裕を持って動くこともできるだろう。ローキックという武器に自信を持ち、それを踏まえた新田スタイルを完成すればいいのではないか。 今でも新田選手は、王者として、完成途上にある。 文 片岡
最近、新田選手は、積極的にオランダ、タイへと渡って武者修行を重ねている。そこでは、決してオランダ・スタイル、タイ・スタイルを模倣するのではなく、自分自身のスタイル、いわば、新田スタイルというべきものを模索しているようだ。 そして、それは少しずつ形をなしているのではないだろうか。「ローキックしかない」ではなく、「ローキックがある」ということ。 一つ大きな武器がある選手は、相手のバランスの良さを突き崩すことができる。そして、大きな武器があるからこそ、余裕を持って動くこともできるだろう。ローキックという武器に自信を持ち、それを踏まえた新田スタイルを完成すればいいのではないか。
今でも新田選手は、王者として、完成途上にある。 文 片岡