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[第10試合 ウェルター級次期挑戦者決定戦 5回戦]
内田康弘 vs 木浪利幸
活祭の競合
の試合は、ウェルター級王者青葉選手への次期挑戦者決定戦に位置づけられている。選手である以上、王者を目指すことは当然。両者ともに、この試合をステップにして頂点へと登り詰めたいところだろう。
 しかし、この試合にはそれとは別に、内田、木浪両選手にとって、自らの復活を期すために、落とせない試合でもある。
 内田選手は、NJKF旗揚げ興行において、メインをつとめ、オランダのカスタム・ダグ選手を完封している。すなわち、内田選手は、NJKFが団体のエースとして期待していた選手である。そして、見事その期待に応え、ハードパンチャーのダグ選手を相手に、堂々と自分の距離、ペースで戦い抜き、判定勝利を収めている。

かし、相手は木浪選手。内田選手が休んでいる間に台頭した、ウェルター級期待のホープである。3回戦当時、その爆発的な攻撃力を武器に順調に階段を駆け上がり、一気に5回戦へと駒を進めた。
 だが、その木浪選手も、ここ2試合、厚く、高い壁にぶち当たっている。ジャルワット・オーエンジャイ選手に2連敗。最初の対戦では、全く持ち味を出せないまま、ジャルワット選手に翻弄され、満を持して臨んだ雪辱戦も、初回に勢いよく飛び出たものの、あっという間にカットされ、レフェリーストップ。
 コンテンダーの少ないウェルター級にあって、木浪選手に掛かる期待は大きく、また、彼にはそれに応えるだけの資質がある。そして、何より、彼自身もそのことは分かっているだろう。
 両者ともに、かつての勢いを取り戻すために、この試合を、相手を踏み台にしたい所だ。



ラウンド1 ーと前蹴りを多用してプレッシャーを掛ける木浪選手。内田選手は、高いガードから、不意にジャブ、前蹴り。牽制のジャブの交換から、木浪選手はロー。少しずつ前に出るが、内田選手が下がり、距離は一定に保たれたまま。木浪選手が右ミドルを出すが、単発。内田選手は木浪選手の蹴り足をキャッチしてストレート、さらに足払い。両者ともに出方をうかがう時間が長く、静かな立ち上がり。

 

ラウンド2 浪選手が進み出て、内田選手が下がる展開。木浪選手が右ミドル。それをキャッチして、投げ捨てる内田選手。両者、ロー、ミドルを交換。内田選手は、下がって距離を保ちつつ、ノーモーションでジャブ。木浪選手が出ようとするところを、機先を制す。その素早いジャブに、木浪選手の動きが封じられる。木浪選手の足が止まるとロー。ミドルを蹴り、隙を狙う。木浪選手は前には出るが、先手をとれない。

ラウンド3 ードを固めて距離を詰める木浪選手だが、内田選手が回り込みながら先制のジャブ、ロー。単発ながら、木浪選手の出足を止める。木浪選手がワンツーを出すと、内田選手もパンチで応戦。しばらくの撃ち合いから首相撲。内田選手は、木浪選手のロックの隙間から腕をねじ込んで自分の組み手に。有利な体勢に持ち込むとヒザを回す。時折、内田選手はヒジも落とし、隙を誘う。離れると、内田選手はパンチの距離を避け、ジャブ、ストレートで出鼻をくじく。ショートに入ってパンチを狙う木浪選手だが、内田選手がステップして連打は許さない。
ラウンド4 田選手が勝負を掛ける。内田選手がハイキック。木浪選手もヒジで返す。3Rまでとうってかわって、内田選手がプレッシャーを掛け、ジャブ、ミドルを散らして木浪選手のガードの隙をつく。木浪選手も、手を出そうとするが、その出鼻を内田選手のジャブ、ミドルで封じられ、前に出られない。全て単発に押さえられる。内田選手は、ガードの隙を狙って、上下にパンチ、キックを打ち込み、ポイントを稼ぐ。  

ラウンド5 び、木浪選手が一気に前に出て、首相撲に持ち込む。ロープ際に追い込むが、そこで逆に内田選手が体を入れ替えて優位に立ち、コーナーに押し込んでヒザを突き上げる。離れても下がりながらテンカオ。木浪選手に踏み込ませない。木浪選手が、攻め込もうとすると、巧みに素早くジャブで攻撃の芽を摘む。攻めあぐむ木浪選手に対し、ローやバックブローまで繰り出す。結局、前には出るが、自分のパンチの距離を作れない木浪選手。パンチの連打も出せないままゴング。判定に。  
 勝利利をアピールする両者


福は、内田選手に。
田選手の巧さが光った試合だった。
 1年7ヶ月のブランクも、今回の試合を見る限り心配する必要はなかったようだ。序盤こそ、やや堅くなったのかも知れないが、相変わらず自分の距離を巧く作って、下がりつつも相手の出鼻を挫くその巧妙さ。そして、機を見て、一気に畳み込むしたたかさ。5Rのスタミナも、少なくとも自分のペースで闘う限り問題なさそうだ。
 一方の木浪選手は、やはり重いパンチで組み立てたかったことだろう。しかし、そのパンチに入る前に、攻撃の芽を摘み取られてしまった。ジャルワット戦でも木浪選手は得意のパンチを封じられ、相手のペースに付き合ってしまった。今回も、内田選手のペースに引きずられ、そこから打開することができなかった。
 木浪選手が輝きを取り戻すには、「もう一つの何か」が必要なのだろう。月並みな言い方だが、次に期待したよう。

 何はともあれ、内田選手が、復活への序章は飾った。次は、完全復活をかけてのタイトルマッチとなるだろう。  

文 片岡


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