突然のカード変更を受けて「やりにくい相手」と言わしめたこの対戦。高野は、ガウンを羽織っての入場。張りつめた面持ちで気迫充分である。対する中沢は、試合経験の豊富からかリラックスした雰囲気を感じた。マリー・スピード氏のコミッショナー宣言が行われた後、10Rの長い試合が始まった。
1・2Rは両者とも様子見で、回ってコツコツ当てて行く。お互いに相手をよく見たいい動き。特に高野は今までの試合の中で一番動きがいい。コンディションのよさを感じさせる、落ち着いた攻めが光っている。
3・4Rでは高野の動きがだんぜん速くなる。中沢のパンチをうまくかわしながらの速い左フックが生きてくる。しかし中沢も、まったくペースをくずさず、重いストレートを繰り出していく。
5・6Rから高野はテクニックを充分に発揮、ボディと上下の打ちわけで手数を出していくが、対する中沢もまったくペースを乱さずストレートを狙ってくる。7R以降、多少高野に疲れと迷いがみられ、中沢はすかさず激しいラッシュを見せる。劣勢になってきた高野が声を出して自分を鼓舞する姿に、会場も次第に熱くなってきた。
「高野がんばれ!」という声と「夏美!いけ!」という声が大きな歓声となって聞こえてくる。その興奮を持続したまま、最終ラウンドでは激しい打ち合いになった。10Rの長い闘いで、両者ともかなりの疲れが見えたが、中沢夏美は最後までまったくペースを崩さなかった。中沢夏美の、キック王者としての「凄み」を痛切に感じさせられる試合であったと言えるだろう。
ミニフライ級初代王者のベルトは、後半の驚異的なスタミナと有効打の多さで中沢の腰に巻かれることとなった。
キックに続き、ボクシングでもチャンプとなった中沢。
「試合はどんどんやりたい。ボクシングでも世界を獲りたい」
と意欲を見せた。
高野としても黙ってはいられまい。惜しくも決勝前にリタイアとなったマーベラス森本、ランキング戦に出場した亀井広美、込山さと子など「ボクシング専門」選手の巻き返しに期待したい。
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