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 [[第11試合]国際試合フェザー級5回戦
小野寺力 vs アタル・ジッティージム
キックボクシングとムエタイ。それが、この試合のテーマの一つである。
 日本人同士の対戦ながら「国際戦」と位置づけられるこの一戦に、多くのファンは、ある種、他流試合の匂いを感じていたのではないだろうか。
 いうまでもなく、小野寺選手は、名実ともに日本のキックボクシング界を牽引するトップ選手である。そこに、キックボクシングとは別の道を歩むアタル選手が「ムエタイなら日本人に負けない」という強烈な自負を持って現れた。この、ムエタイで40戦以上をこなすアタル選手の矜持が、見る者に極度の違和感とゾクゾクするような期待を抱かせる。
方法論の違う両者が相見えるこの試合、久しぶりに選手がリングに上がる前から緊張感を漂わせる。

 もう一つ、テーマは、「小野寺選手は、復調しているか?」という点だろうか。
 昨年の連敗と出場停止処分により、順調だった小野寺選手の歩みもペースが崩された感がある。今年も、3月に南豪王者に完勝するも自己採点は30点。5月にはマサル選手とドローに終わり、今一つ以前の輝きを取り戻していないようにも思われる。
 果たして、今日、小野寺選手は真の復活を遂げることができるか?。そんなことを思えば、今日の試合は、見応えのある試合が期待できるはずだ。



ラウンド1 タル選手が左ミドルから入ると首を取って、小野寺選手を押さえる。小野寺選手は、ワンツーからボディフック、アッパーを織り交ぜてパンチとローのコンビネーションで組立。アタル選手は前蹴りで距離を取りつつ、左右のミドル、時折首相撲に行くが深追いはしない。小野寺選手は、相手の動きをよく見て、スウェイした後にハイやワンツーを返す。

 

ラウンド2 野寺選手はアタル選手のミドルに、フックを合わせる。アタル選手は右ミドルから首を掴まえにいって押さえ込むとヒザを回す。胴に組みついて、多少態勢が悪くてもヒザを大きく回すアタル選手。小野寺選手は、ミドルをスウェイでかわし、パンチの距離を選んで素早くワンツーと右ロー。ミドルとローを互いに交換。終盤、小野寺選手のパンチとローに対しアタル選手が首相撲でヒザを出してゴング。

 
 首相撲ならアタルが上
 大きく回す膝を使う

ラウンド3 タル選手が左ミドルと見せかけて右ハイを出すもかわされる。小野寺選手はミドルに合わせてストレート、フックを返す。パンチの距離を避けたいアタル選手が、大きく手を出して首を取りに行くが、それをワンツーと前蹴りで突き放す小野寺選手。互いにミドルを出して、アタル選手が中に入ろうとするその組み際にアッパー。組みつくと、アタル選手が小野寺選手を横向きにしてヒザを入れる。小野寺選手は前蹴りを多用。ミドルレンジでは、小野寺選手はワンツー・ロー、アタル選手は左右のミドル。そして小野寺選手の左ボディブローがアタル選手に直撃。すかさず左フックを叩き込む。後退しながらもハイを出すアタル選手の間隙をついて小野寺選手がバックスピンキック。これで、アタル選手の動きが止まる。コーナー間を彷徨うアタル選手を追いかけ、ボディの連打、ガードが下がると打ち下ろしのストレートの雨を降らせる。

ラウンド4 タル選手がミドル出すと、小野寺選手は左フック。アタル選手は組んでヒザ出す。前蹴りで突き放す小野寺選手は、近づくアタル選手に右ハイ。腹が空くとすかさず左ボディブロー。さらにボディフックから左フックに繋げて、そこからストレート系へ。アタル選手が前に出るとワンツー・ボディフック、右ハイと、攻撃の手を休めない小野寺選手。組みついたアタル選手はヒザを回すが、小野寺選手も巧く組み合う。アタル選手がミドルを空振りすると、右ローを叩き込み、左ストレートでコーナーに押し込むとショートパンチの連打。腰の崩れたアタル選手になおもヒザ。アタル選手もミドルを出すが、そこでゴング。

 
 小野寺必殺のバックキック
 これで一気に流を掴んだ

ラウンド5 始早々、下がりながら回るアタル選手を追いかける小野寺選手が、右ミドルに合わせて、左フックそして右ストレートを打ち抜く。もろに喰らったアタル選手の体が回転するように吹っ飛んだ。そのまま立ち上がれない。失神KO劇に会場は爆発状態に。

 
 ミドルに来るアタルにパンチの
 2連発で止め


小野寺選手の完勝だった。
 予想通り、というか、当然に、アタル選手はムエタイスタイルで闘いに挑んだ。ミドルと首相撲を中心に試合を組み立て、首相撲ではしばしば小野寺選手を押さえ込む場面も見られた。
 しかし、小野寺選手もミドルには、ワンツーやローで相殺し、首相撲には、そこに持ち込まれる前にうまく突き放し、決してペースを握らせなかった。
 今日の小野寺選手はほとんどパーフェクトと言っていい出来だったと思う。アタル選手を遥かに凌駕するスピード、とりわけ、パンチのコンビネーションをあれだけ速く叩き込まれることは、アタル選手にも余り経験がなかったのかも知れない。対応が一歩遅れ、首相撲に持ち込もうと腕を伸ばして近づこうとするも、ガードの下からアッパー、ボディフック、さらに強烈無比なローキックと叩き込まれては、思い切って組みに行けずに度々躊躇していた。
 そして、フィニッシュは、余りに衝撃的な失神KO。キックルールだろうが、ムエタイルールだろうが、文句のいいようのない完全勝利。対ムエタイという当初のテーマは、最後の右ストレート一発で吹っ飛び、もう一つのテーマ、小野寺選手の完全復活を感じさせるものとなった。
 小野寺選手自身も、控え室で高らかに復活を宣言し、今後の更なる飛躍を示唆した。
インタビューでは、前回苦汁を飲まされたマサル選手とのタイトルマッチから、他団体の選手との対戦にも言及している。意欲がうかがえるのは嬉しいことだ。

 復活を果たした小野寺選手の次なる目標は何か。
 是非、会場で、ご自分の目で確かめて欲しい。

文 片岡


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