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[第11試合 日・タイ国際戦 57kg契約5回戦]
楠本勝也 vs ガライソン・チョー・タップティムトー
本選手は、前回の貝沼慶太(J−NETWORK/アクティブJ)戦を大きな飛躍の第一歩とするつもりだった。楠本選手より名のある貝沼選手を叩くことによって、自らの知名度を上げる目論見だった。
 しかし、貝沼選手の間合いと技術に翻弄され、挙げ句ハイキックでKO寸前のダウンを奪われるという内容で、ほとんど負けにも等しい引き分けに終わってしまった。ブレイクするつもりで臨んだ試合で、思わぬ足止めを喰らってしまった格好だ。
 もともと、北星ジム所属らしい、気持ちいいほどに振り抜く重いパンチとキックのコンビネーションは定評があった。貝沼戦では、それを有効に活かすことができずに終わってしまったが、今日は一段とパワーアップし、洗練した新しい楠本選手をみることができるだろうか。
 同じく王者の鈴木選手がランカーを相手に闘う同じ日のリングで、ノーランカーとの対戦を取りこぼすわけにはいかないだろう。大いなる飛躍への再スタートのためには、絶対おろそかにできない一戦となるだろう。



ラウンド1 かにローとハイを散らす楠本選手。サウスポーに構えるガライソン選手はミドルを返す。楠本選手は、ミドルは腕で受けて即座に右ストレートを返す。ガライソン選手も時折ロングのパンチを狙うが、パンチでは楠本選手が撃ち勝つ。相手のミドルに合わせて、ワンツーからフックに繋げ、上段にまとめて叩き込む。


 
ラウンド2 ドルの蹴り合いから、楠本選手が右ストレート。ガライソン選手も左ミドルを出すが、楠本選手がすぐに右ストレートを返してくるので、次が続かない。楠本選手は、べた足のままジリジリと前に進み出て、右ローを叩き込み素早くワンツーからの連打。亀になってガードするガライソン選手だが、その上から構わず殴りつけてローを打って離れる楠本選手。


ミドルを蹴っても
直後パンチが帰ってくる
 
ラウンド3 ーから入る楠本選手に、ガライソン選手もミドルを返す。しかし、そのミドルに勢いよくストレートを返し、パンチで押し返す。楠本選手が小刻みに出し続けたローを嫌がるガライソン選手。楠本選手が圧力を掛けて、ローを打つと横を向いて避けるガライソン選手。コーナーまで追い詰めた楠本選手は、そこから速い回転のパンチ連打。徐々に腰が落ちるガライソン選手になおもパンチとミドルを入れると、横に崩れるガライソン選手。横たわったまま起きられず、楠本選手のKO勝ちが告げられた!。


ロープに押し込み止めの左ミドル
 

日の楠本選手は、全く危なげなく勝利をものにした。見ていて安心できる試合ぶりだったといえる。
 自分の距離、ペースで闘い、相手に付き合わない。そして、自らの最大の武器であるハードパンチは健在どころか、ますます磨きがかかっていたようにも思われた。まさに、完勝と言っていいだろう。
 しかし、惜しむらくは相手が17才と非常に若い選手で、鈴木選手が闘うランカーと違い、まだノーランカーの選手であった。単調にミドルを蹴るだけで、それも楠本選手が右ストレートを返すと動きが止まってしまうなど、楠本選手の相手としては、やや物足りない印象は否めない。決して悪い選手ではないが(試合数だけなら50戦を超えているし、経験も楠本選手よりずっとあるが)、今の楠本選手の相手ならば、もう少し厄介な相手を用意しても良かったかも知れない。

 …せっかくの快勝に難癖を付けるようだが、これには理由がある。
 そう、楠本選手は、フェザー級への転向を示唆している。そして、そのフェザー級の頂上には、確実にムエタイ越えへと進んでいる鈴木秀明選手が待ちかまえているのだ。とすれば、楠本選手にかかる期待も大きくなるというもの。
 その意味で、今日の一戦は、まさに会心の再スタートといえる。しかし、そこに安住することなく、新天地フェザー級でも、どん欲に上へ上へと突き進んで欲しいと思う。

文 片岡


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