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 [第9試合 フェザー級次期挑戦者決定戦5回戦]
中島稔倫 vs 杉本金太郎
の試合、単なるランカー対決というだけでなく、次期タイトル挑戦者決定戦という意味を持っている。
 中島選手は、かつての全日本バンタム級王者。多彩なパンチを主軸に攻撃を組み立てるが、キックとのバランスもいい実力者だ。昨年はコンスタントに試合をこなし、後半は3連勝。勢いに乗っている、といいたいが今年は初の試合となる。半年の空白は、充電期間か。昨年の勢いを持続して、粘り強いファイトで勝利をものにするか。
 対する杉本選手も4連勝中。しかも、ここ3試合連続のKO勝ち。さらに、その勝ち方が全てハイキックという派手なフィニッシュ。とりわけ昨年10月の石田戦は、両者ほぼ互角のまま進んだ5ラウンド、その終了間際に見事な一撃。会場が割れんばかりに歓声に包まれた。杉本選手も今年初の試合となるが、連勝の勢いに乗って鮮やかな勝利で初のタイトル挑戦権を獲得したいところだろう。



ラウンド1 島選手のワンツー、ローと杉本選手のミドルの交換から。中島選手がパンチの距離に入ると先手をとって、ワンツーでガードを取らせて下からアッパーを入れる。中島選手はロングレンジからもパンチを狙う。杉本選手も、ミドル、ローを返し、両者細かくパンチを出し合ってゴング。

ラウンド2 島選手がワンツーからミドルと仕掛け、杉本選手もリードジャブからローを返す。中島選手は先手を取って、杉本選手がガードを固めたところにショートの連打とアッパーを突き上げる、ガードの隙からヒジを落とす。杉本選手も細かいフェイントからリードジャブを打ってのロー、飛び込み際にヒジを振るが、中島選手がパンチを重ねて若干押し気味に。

ラウンド3 ドルの蹴り合いから、ややパンチの精度に優る中島選手が右ストレートをヒット。杉本選手は少し下がり目に左に回ってロングから左フック、ミドルで応じる。中島選手は、懐に入る時にアッパーやジャブを散らし、中でショートパンチを打つとローで離れる。杉本選手は、その飛び込みにヒザを出すが、中島選手もそれを捌いてパンチを狙う。

ラウンド4 盤から激しいパンチの応酬。そこから杉本選手がミドルキックの連打、ワンツーとローのコンビで押し込む。中島選手はショートストレート、フックに、角度を変えて何種類かヒジを織り交ぜる。ミドルの蹴り合いは互角も、近距離で中島選手がややペースを握る。杉本選手は、終盤にハイキック出すもきっちりガードされる。

ラウンド5 島選手が左をリードしておいてストレートを放てば、杉本選手もワンツー、ヒザを返す。激しい撃ち合いも、両者クリーンヒットは少ない。パンチでリードする中島選手に、ミドルで押し返す杉本選手。パンチでは譲る杉本選手が組んでヒザを狙うが、なかなか攻めきれない。ゴングと同時に両者大きく両手を上げて勝利をアピールするもドロー判定。

延長戦 央でショートパンチを撃ち合う両者。攻守入れ替わりながら、時折ローを織り交ぜるが、共にパンチで倒しに来ている。杉本選手も左ショートストレート、フックを小気味よく出し、中島選手もアッパーなど多彩なパンチで応じる。中盤以降はミドルの交換から中島選手はそのミドルに左ジャブを合わせ、杉本選手は前蹴りからさらにミドルの連打。両者、ほぼ互角のまま延長ラウンドも終了。


長ラウンドも実に難しい判定だったが、結果的には3−0で中島選手に勝利が告げられた。
 本戦の印象は、やや中島選手の圧力が優ったようにも思われたが、杉本選手もクリーンヒットを許したわけではなく、自身もミドルやパンチを中心にきちんと返していたので、ドロー判定も妥当というところだろうか。
 激しい撃ち合いもあり、両者アグレッシブな姿勢が見られた好勝負だったといえよう。

 これで、中島選手がフェザー級のタイトルへの挑戦権を獲得し、2階級制覇へと一歩駒を進めたことになる。しかし、その頂上に待ちかまえる鈴木選手は、中島選手といえど打ち崩すことは容易ではないだろう。鈴木選手は今や日本屈指のファイターへと成長し、勢いにも乗っている。両者の激突は、同じ名古屋勢でもあるし、単なる技術戦ではなく、おそらくは手の内を読んでの高等な心理戦ともなるだろう。すなわち、好試合は必至。大いに期待したいと思う。
 杉本選手は惜しい星を落とし(公式記録はドロー)、初のタイトル挑戦はかなわなかった。しかし、フェザー戦線で杉本選手は非常に輝いているし、近い将来再びベルト争いに絡んでくるはずだ。それまで勝ち星を重ね、また素晴らしいハイキックの切れを見せて欲しいと思う。 

 なお、この試合では延長ラウンドが採用されたが、若干の疑問がある。手許のパンフレットには、延長戦は「王座決定戦のみ」行う旨が記されているからである。実際には、延長ラウンドを行うことに十分な説得力があったと思うので、特に非難するつもりはない。ただ、ルールの公開という非常に大事な努力を怠らないNJKFだけに(一般のファンには、なかなかルールが知り得ないということも少なくない。その意味で、NJKFの態度は良心的であり、十分尊重に値するものと解される。)、もう少し厳格に運用しても良かったのではないかという気もするだが…。
 些末な揚げ足取りのようで申し訳ないが、団体及びキック界の発展を願ってのものであり、中島、杉本両選手の試合を貶める意図ではないので、その点ご容赦いただきたい。

文 片岡


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