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 [第10試合 日・タイ国際戦 53kg契約5回戦]
安川賢 vs アラビアン・ゲッソリパー
川選手のNJKFでの試合は、約半年ぶり。しかし、その間も長期のタイ修行に臨み、現地で3試合をこなしいている。
 1月のNJKFでのリチリ・ラチド戦は、判定でものにはしたものの、相手のパワーとバタバタした闘いぶりに振り回され、安川選手本来の力が発揮できていたとは言い難かった。安川選手自身も、自分の闘いができなかったと反省していたが、確かに克服すべき課題を感じさせた。その時の反省と、3〜5月のタイ遠征及び現地での試合を経て、安川選手は成長ぶりを誇示することができるだろうか。
 今日の対戦相手は、自分の力を試すには格好の相手である。そう、日本を主戦場に、団体を選ばず軽量級を荒らしまわるアラビアン選手がその対戦相手。とりわけ、フライ級最強の呼び声も高かった山田選手を破っている事実は、安川選手のプライドをくすぐるだろう。
 実力者アラビアン選手を相手に、安川選手がどう闘うか。楽しみに見守りたい。



ラウンド1 ングが鳴り、グローブを合わせるふりをしていきなり前蹴りで安川選手の顔を突き上げる。一瞬ひるんだ安川選手だったが、距離を詰めて首相撲に。アラビアン選手は、首相撲につきあわず、足をすくって大きく投げる。離れると前蹴りで距離を取り、大きなフェイントやノーガードで挑発するアラビアン選手。

ラウンド2 川選手がローとミドルで仕掛ける。アラビアン選手は蹴り足をキャッチして軸足を刈って転がす。密着すると、隙を狙ってヒジを打ちつける。安川選手は、ロープを背負ったアラビアン選手にローやヒザを出すが、アラビアン選手は、そこから体を浴びせるように倒れ込む。まともに攻めないアラビアン選手は、変則的にジャブやヒジを出す。安川選手は、ローやミドルを出すが、攻めきれない。

ラウンド3 ンツー、ローから首相撲になるが、アラビアン選手はヒザにいかず、転がしては体ごと叩き付ける。安川選手はロープに追い詰めるが、そこで見合って単発でロー。首相撲になだれ込むと、アラビアン選手がガッチリと腕をロックして安川選手をコントロール。ヒザを回す。時折ヒジを交え、投げ捨てるように転がすアラビアン選手。

ラウンド4 ラビアン選手は前蹴りでロープまで突き放してロー。安川選手もローやミドルを返すが、蹴り足をキャッチされて転がされる。首相撲では、組み手争いアラビアン選手がややリード。力任せにコーナーまで押し込んでは、前蹴り、ヒジ、ローを荒っぽく放つ。パンチの距離には入らず、アラビアン選手のペースで進む。

ラウンド5 ヤニヤ笑うアラビアン選手。安川選手はパンチで突っ込んでローを返す。アラビアン選手は、小さくテンカオを出し、そこから組みついて投げ捨てる。接近するとヒジを振り合うが、互いに決まらず、首を取るとアラビアン選手が巧く体を引いてヒザを避けつつ、自らはヒジとヒザで攻め込む。前蹴りで離れて、安川選手が飛び込むとテンカオ。安川選手はなかなか攻め込めないままゴング。


川選手はまたも相手の荒っぽい展開に翻弄され、今回は試合も落としてしまった。
 アラビアン選手は日本人のフライ級相手には本当に強さを発揮するが、今日はいつもにも増してムエタイの「いやらしさ」を全開にして、見事に安川選手を封じ込んだ。ほとんどまともな攻撃を出さず、安川選手の正調なスタイルにもつきあわず、隙を見ては狡猾にヒジを狙うところ等、引き出しの多い所を見せつけた。
 安川選手については、次に期待したいと言うほかない。
 王座を奪った佐々木選手との対戦のように、ムエタイスタイルが噛み合うときには無類の美しさと強さを兼ね備えたファイトを見せるのだが、今回は、生真面目な攻めが裏目に出るというラチド戦の轍を踏んでしまったようだ。
 一つ一つの技術の完成度は非常に高いだけに、自分のペースに持ち込む展開力のようなものを身に付ければ、もっともっと高みに行けると思うのだが…素人考えだろうか。

 繰り返すが、安川選手の次の試合に期待しよう。

文 片岡


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