▼かつて日本を本拠に修斗、PRIDEのリングで活躍。“褐色のサムライ”と呼ばれ日本にも多くのファンを持つカーロス・ニュートンが、5月4日米国ニュージャージー州アトランティックシティで開催されたUFC31で、パット・ミレティッチを破りウェルター王者の座に就いた。ミレティッチは98年10月の王者決定戦でマイク・バーネットを破りライト級初代王座に就いて以来2年6ヶ月間の長期政権を築き、“アンディフィーデット・チャンピオン(無敗の王者)”の異名を持つ。昨年12月には日本で開催されたUFC-Jでは、山本喧一を相手に4回目の防衛戦をクリア。修斗ミドル級王者・桜井“マッハ”速人からも対戦を熱望されるなど、世界の中軽量級選手の標的とされてきた選手だった。体重制改正で、ミレティッチのベルトはライト級からウェルター級へと変更され、今回の防衛戦となった。
挑戦者ニュートンは初回から軽快なフットワークでジャブを繰り出す王者のパンチに何回も顔面を捕らえられ、なかなか自分のペースがつかめない。なんとかタックルでグラウンドに持ち込んでも、ガードポジションでがっちり密着してくるミレティッチの盤石の防御に手を焼いた。このままなら良くてドローで王者の防衛かと見られた3R、突如幸運の女神がニュートンに微笑んだ。ガードポジションを解いて自らスタンドに戻ろうとしたミレティッチに隙ができたのだ、すかさず横からもう一度胴タックルを仕掛けたニュートンに、反射的にミレティッチは首を取っての払い腰で投げようとしたのだ。しかし、これが王者最大の誤算だった。ニュートンの格闘技的なバックボーンは、講堂館柔道をベースにしたサバイバル柔術であり、投げへの対応はお手の物。すばやくミレティッチの背中を飛び越すと、逆サイドから首を襲い全力で締め上げたのだ。予想も付かないカウンター攻撃に為す術を失った王者は、ただタップするしかなかった。
真新しいベルトを腰にまかれたニュートンは、TVレポーターのインタビューの最中突然「ユキノサーン、カッター」と日本語で絶叫。ロッキーばりの恋人への愛の告白かと周囲の度肝を抜いたが、実はこれPRIDEを主催するドリームステージエンターテイメント(DSE)の米国駐在女性社員の名前。ニュートンはベルトを手土産にPRIDEへの凱旋アピールをしたのであった。おりしも、この会場にはUFC提携を前提にした現地視察のためDSEの森下社長も訪れており、ニュートンの日本凱旋の可能性は決定的になったといえるだろう。勝利後見せるドラゴンボールのカメハメハポーズ、かつてPRIDE.3で繰り広げた桜庭和志との名勝負など、日本の格闘技ファンにはすっかりおなじみのニュートンだが、まだまだ一般的知名度は高いとは言えない。今後UFC王者としてPRIDEに逆上陸することで、日本とアメリカを又にかけた大ブレイクが期待される。
またこの大会では、メインイベントとして王者ランディ・クートゥアとペドロ・ヒーゾによるヘビー級タイトルマッチも行われた。ヒーゾの重爆キックで王者がぐらつくシーンも見られたが、驚異のスタミナで後半テイクダウンを重ねた王者が辛くも防衛に成功。二階級における世代交代は実現しなかった。